「私立バカレア学園 劇場版」における論点

 

「私立バカレア学園 劇場版」における論点

 

 

 

 













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      〜彼らはもっと幸せになれたはず〜



本レポートについて

本レポートは「私立バカレア高校」において、私の推しである六人組アイドルグループSixTONES(当時ジャニーズJr.)が、どうして作中で苦しまなければならなかったのか、その苦しみを軽減できたのではないか、という点を法的思考を用いて考察するものである。



私立バカレア高校」とは

私立バカレア高校」とは2012年4月に日本テレビで放送された、秋元康原作で、当時のジャニーズJr.とAKB48のメンバーがコラボをして作られた学園もの青春ドラマである。深夜帯としては異例の高視聴率を記録し、同年10月に「私立バカレア高校 劇場版」の公開が決定した。

 

キャスト









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あらすじ

馬鹿田高校は屈指のヤンキー高校であるが、ひょんなことから超名門お嬢様高校カトレア高校と期間限定で併合をすることになる。それにより、「一回でも喧嘩をしたら退学」の校則を守らなけらばならなくなるのだが、タイミング悪く、敵高校にユウキと誠を拉致られてしまう。達也たちは馬鹿田を守るために喧嘩を諦めるのか、それとも仲間を救うために喧嘩をしてしまうのか、彼らは究極の決断を迫られる。

 

論点① カトレアの校則を守る義務について

馬鹿田高校の彼らはもちろん、馬鹿田高校に入学したのだが、一時的なカトレア学園との併合により、カトレアの校則遵守を強いられることになる。これによって、彼らは葛藤し、苦しみ悶えるわけだが、ここで一つ疑問が浮かぶ。そもそも、「馬鹿田高校」に入学した彼らが、「一時的な」カトレア学園との併合において、カトレア学園の校則を守る必要があるのか、という点である。以下、この論点について様々な視点から考察を重ねる。

 

校則に拘束力はあるのか

そもそも、校則には、それを守らなくてはならないような拘束力は存在するのか。事実、校則に法的拘束力は存在しない。しかし、その校則が裁量の範囲内であり、社会的通念と照らし合わせた時に合理性にかなっているならば、違法性は認められない。2021年2月16日、実際に大阪地裁である校則をめぐる裁判が起こされ、判決が下った。争点となった校則の「髪の染色や脱色の禁止」であるが、大阪地裁は「髪の染色や脱色の禁止した校則は学校の裁量の範囲内で、頭髪指導も違法とは言えない」と判断を下した。(NHKニュース 2021年2月16日)また、昭和53年3月15日、最高裁判所が、「法令に別格の規定がない場合でも、大学がその目的を達成するために学則を制定する自律的・包括的機能を有する」とした判例も存在する。(富山大学単位不認定事件より)

これらに則ると、カトレア学園の「一回でも喧嘩をしたら退学処分とする」という校則は、合理的であり、かつ、学園側の「学園ブランドを守る」「生徒をトラブルから守る」といった目的達成のための校則制定だとみても、認められる余地があるものであると考える。その上、上記の最高裁の判決は「法令に別格の規定がない場合」の話であり、一般的に「喧嘩」とは暴行罪、もしくは傷害罪に当たる可能性が高い。新明解国語辞典国語辞典第四版によると、「喧嘩」とは、「互いに、自分を正しいとして譲らず、激しく非難しあったり、殴り合ったりすることと」とある。よって、今回のカトレア学園の校則は、法によっても、有効であると認められるべきであり、学生がこれを破れば制裁処置(今回は「退学処分」)を学校側が行うことは可能だと言えるだろう。

 

論点②契約は成立か

確かに、論点①より、高速のニア用は彼らが守るべき妥当性があったかもしれない。

多くの学校は、入学の際、学生に「校則を遵守することを約束する」旨の書面にサインをさせる。これは一種の契約であると言える。しかし、今回、馬鹿田高校はカトレア学園と途中からの併合を行ったため、馬鹿田高校の生徒である彼らがカトレア学園の校則を遵守することを約束し、契約したと言えないのではないか。もし、契約したと言えないのなら、彼らが作中で葛藤する必要はなかったはずだ。ここではこの論点について二つの視点から考える。

 

a.「カトレアの校則」という新たな契約の視点

まずどのような条件を満たしたら「契約をした」と言えるのか。契約は全てが認められるわけではないが、ボーダーラインは存在する。それは契約者が、契約について十分な説明を明確に受けたかどうかである。消費者契約法によると、細かい約款の一部に書いてあったのみでは微妙であり、ルールが隠してある場合、親が契約し、その子供が知らなかった場合、もしくは高圧的な態度で反対できる状況になかった場合などは違反とな李、その契約は認められない。

作中、馬鹿田高校は校舎が一部改修工事に入るため、一時的にカトレア学園との併合が行われることとなった。在校中の学校といえど、基本的に併合に関して、しかも改修工事などやむを得ない理由がある場合の一時的な併合に関しては学生たちは口を出せないはずである。この点を考慮すると、契約違反となりうる高圧的な態度、要は契約者(学生)が断ることができない状況を馬鹿田高校側は作り出していたことになる。これは契約違反であり、彼らがカトレア学園の校則を守る義務はないということになるのではないか。しかし、この契約違反に関する基準はあくまでも「消費者契約法」によるものであり、「学校と学生」という関係は「消費者と事業者」の立場ではないという反論もあるだろう。ではそもそも消費者契約法とはなぜ成立したのか。それは消費者と事業者では保有している情報量やその質、また交渉力が大きく異なり、パワーバランスが不平等であり、そのような関係の中での消費者の権利を守るためである。パワーバランスが不平等で、そのような関係性の中だからこそ、権利を守られるべきは学生も同じではないのだろうか。契約違反の基準は確かに消費者契約法に則ったものであるが、この契約法が成立した背景を見ると、これが学生と学校に適用されても不思議ではないし、むしろ学生の権利を守るためには適用されるべきとも言えるだろう。

 

b.契約の変更の視点

ここで「『カトレア学園の校則』という新たな契約」という見方をせずに、「馬鹿田高校の校則が彼らの在学中に変更された」という視点を採用する。そうすると、まず、両者の同意なく、一度締結した契約を、片方が勝手に変更するのは許されない。労働基準法2条によると、労働条件の決定の項では、雇用者が勝手に契約内容を変更することは禁止している。また、労働契約法8条においては、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」との記載があり、片方の意思のみでは労働に関する契約を変更できないことが明記されている。これも、労働者と雇用者のための法ではあるが、上記の消費者契約法同様、弱者を大きな組織から守るために法である点は変わらない。よって、労働基準法の契約の変更に関する法を学生と学校に適用することも、実は自然であ

ると言えるのではないか。これは、労働基準法・契約法だけでなく、民法548条の4に則っても、同じ結果となる。

548条の4を見ると、実は定型約款の場合、相手の合意なしに契約を変更することが可能である。しかし、そこにはいくつかの条件である。一つ目は、変更が相手にとって利益であること、二つ目が相手にとって不利益変更である場合、その変更が目的合理性を持つこと、三つ目が相手にその変更を事前に適切な方法で周知しておくこと、である。この定型約款はそもそも、なぜ相手の合意が必ずしも必要ではないかというと、定型約款とは企業が多数の利用者とした契約のことであり、変更の際、全ての利用者に合意、もしくは非合意を選択してもらうのは非常に煩雑であるからである。その点を踏まえると、学校と学生という、締結主と多数の利用者の構図は民法548条を採用する点に関しては違和感がないと言えよう。では、問題の「三つの条件を学校側はクリアできているのか」ということであるが、筆者は三つ目の「事前に適切な方法で周知をする」ことが行われいなかったように思う。作中において、学校側が併合より前にそのような校則をこれから彼らが守る必要ができることは伝えていなかった。さらに、カトレア学園との併合後に、カトレア学園の生徒から馬鹿田高校の生徒へ校則の内容が告げられ、彼らが驚く、といったシーンが存在した。これは事前に彼らに、変更が伝えられていなかった証拠であり、かつ生徒の口から重要な校則について伝えられるのは、適切な周知方法であるとも言い難い。このような点から、馬鹿田高校側は馬鹿田高校の校則を変更した、と認めることはできないと言えるだろう。

 

結論

馬鹿田高校生徒には、カトレア学園と併合するにあたって、カトレア学園の校則を守る義務が発生したとは言えない。理由は以下である。

 

  1. 消費者法・契約法に基づき、馬鹿田高校生徒が契約をしたとは言えない。
  2. 労働基準法民法に基づき、馬鹿田高校は契約を変更したとは言えない。

 

この二点に基づき、馬鹿田高校の生徒である、達也、哲也、麻耶、聡、ユウキ、誠らにはカトレア学園の「喧嘩を一度でもしたら退学」という旨の校則を守る義務は発生しない。

彼らは、守る義務のない校則に縛られ、無駄な葛藤をしたと言えるだろう。私の推しに嫌な思いをさせたという点で、馬鹿田高校を提訴したい。




注意:本レポートは暴力行為を推奨するものではありません。



引用元

https://news.yahoo.co.jp/byline/senoomasatoshi/20210218-00223230/ )

https://book.jiji.com/seminar/limited/column/column-2994/

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